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大学礼拝 2019/7/9「溢愛館(いつあいかん)の働きを通して思うこと」

カテゴリー:大学礼拝

約40年前に私は溢愛館に就職しました。当時はオイルショックの時代で、大変な不景気でした。トイレットペーパーの買い占め騒動など、社会が騒然とする中、就職するのも難しかったのですが、私は楽観的で「何とかなるさ」と高をくくっていました。そういうおごった性格が禍してか、公務員試験に落ちて困り果てていました。

そんな状況で溢愛館の求人にたまたま出会いました。もともと福祉の仕事がしたかった私は運よく採用されたわけですが、後から聞いた話では、「おまえは大学出たばかりだから給料が安くすむし、経験がないのも教えがいがある。器用さも力もないが、真面目さだけはありそうだ」という評価だったということです。実際、私は3年くらいは全く役に立たなかったのです。これも後から聞いた話ですが、同僚らが施設長に向かって「成瀬を辞めさせて、キャリアのある女性を採用してくれ」と嘆願したくらいのひどさだったようです。

さて、こんな私でも40年もの間、溢愛館に勤められたのはどうしてでしょう。それは、職場環境が私を育ててくれたからなのです。特に、溢愛館で出会った子どもたちやその親たちとの関わりが私を成長させてくれました。里親との関係もそうでした。児童相談所の方針に異議を唱えて里親探しを進めてうまくいったこともありましたし、逆に、十分な検討を重ねることができないまま里親へ子どもを預けて、結局、残念な結果に終わったこともありました。両親とも精神疾患を患ってしまったその子どもが、親元に引き取られてから立派に成長していく姿にも出会えました。

どんな人も未熟なままで就職します。でも、与えられた環境の中で完成体に近づいていくのです。たとえ最初は力がなくても、人間関係の広がりを通して成長していきます。だから、あきらめる必要はありません。こんな私でも、今こうして話をしながら学ばせてもらっています。活かされていることが実感できます。(成瀬 英雄 本学非常勤講師、要約は加藤)

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