大学礼拝「あなたもタレントさんですよ!」2018/9/19
タレントという言葉を聞くとわたしたちはすぐ有名な俳優や歌手、今売れている芸人、テレビのタレントなどを思い起こします。タレントはもともとギリシャ語のタラント(タラントン)が語源で、重さを表す単位でしたが、イエスさまの時代には貨幣の単位として使われるようになりました。今読んでいただいたタラントンのたとえも貨幣の単位として使われています。今日ではタレントを才能、能力の意味で使い、特別に才能ある俳優、歌手、芸人などをタレントと呼んでいます。
このたとえ話では、主人が長い旅に出る時、自分の財産を僕たちの才能、能力に応じてひとりには5タラントン、もう一人には2タラントン、3人目の僕には1タラントンを預けました。5タラントン預かった僕はその5タラントンで商売をし、2倍の10タラントンにしました。2タラントン預かった僕はその2タラントンで商売をし、2倍の4タラントンにしました。1タラントン預かった僕はその1タラントンを穴を掘って隠しておきました。
長い年月が経って、主人が返って来て、僕たちと預けたタラントンの清算を始めました。5タラントンを預かった僕は10タラントンを差し出しました。それに対して主人は「忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。」と言いました。 2タラントンを預かった僕は4タラントンを差し出しました。それに対して主人は「忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。」と5タラントンを預けた僕に言った同じ言葉で彼を誉めました。
1タラントンを預かった僕はその1タラントンを穴から掘り出し、主人に「あなたは蒔かないところから刈り取り、散らさないところからかき集められる厳しい方だと知っていましたので、恐ろしくなり、土の中に埋めておきました。これがあなたのお金です。」と言って1タラントンを差し出しました。これに対して主人は「怠け者の悪い僕だ。わたしが蒔かないところから刈り取り、散らさないところからかき集めることを知っていたのか。それなら銀行に入れておくべきであった。そうしておけば、帰って来たとき、利息付きで返してもらえたのに。さあ、そのタラントンをこの男から取り上げて、10タラントン持っている者に与えよ。」と言ったというたとえです。
さてこのたとえ話はわたしたちに何を語りかけているのでしょうか。
まず、タラントンですが、1タラントンは6,000デナリオン。1デナリオンは1日分の労働賃金に当たりますから、現在の貨幣価値でおよそ1万円に相当します。ですから1タラントンは およそ6,000万円、6,000日分(16年分)の賃金です。2タラントンは1億2,000万円、5タラントンは3億円に相当します。主人が僕に預けたタラントンとは、神から与えられ、預かっているわたしたちの才能、能力のことです。人それぞれにふさわしい才能や能力が与えられ、それをわたしたちは預かっているのです。1タラントンは大金です。5タラントンは驚くなかれ、何と3億円です。こんな大金を僕に預ける主人がこの世にいるでしょうか。預かった僕はどう思ったのでしょうか。主人は言います。「忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。」と。「少しのものに忠実であった」と主人は言います。3億円を少しのものと言い、1億2,000万円も少しのものと言う主人とは、一体どんな方なのでしょうか。わたしたちの考える価値観では測れない、驚くべき主人の懐の深さと寛大さを知らされます。
わたしたちの持っているタラントンは神の目から見れば、ほんとに小さいもの、僅かなものなのですが、わたしたちの目には、とても大きなものです。それを最大限に生かす時、自分では想像もできないような素晴らしい結果が生まれることが約束されています。
「あなたもタレントさんですよ」と皆さんは声をかけられています。保育者の卵としてのタレントを持っています。教育実習、保育実習へ行って、自分のタレントに気づかされましたか、目覚めさせられましたか。1タラントンという神さまから預かったとても大きな才能、能力を土に埋めて眠らせてしまった僕は、「怠け者の悪い僕だ。」と主人からお叱りを受けました。皆さんはどうですか。大切なタラントを怠けて埋めたままにしていませんか。人はそれぞれ違ったタレントを神さまから預かっています。あなたとわたしを比べる必要はありません。わたしはわたしにふさわしい才能、能力を生かして用いることがいちばん大切なことです。自分にはそんなタレントはないと決めてかかっているようなところがないでしょうか。わたしたち一人一人に与えられているタレントは想像できないほど、大きなものです。その大きなものに気づき、それを大切に生かして用いていくとき、皆さんは間違いなく保育のタレントさんへと成長していきます。
聖書の人間観は、人間の目で判断した能力の有る無しで、人間の優劣を決めません。自分に与えられている能力、才能をどれだけ真剣に誠実に用いたかが問われているのです。
このたとえ話をそのような視点からもう一度読んでみてほしいと思います。 (チャプレン 大西 修)
【マタイによる福音書 25:14-30】
◆「タラントン」のたとえ
25:14 「天の国はまた次のようにたとえられる。ある人が旅行に出かけるとき、僕たちを呼んで、自分の財産を預けた。
25:15 それぞれの力に応じて、一人には五タラントン、一人には二タラントン、もう一人には一タラントンを預けて旅に出かけた。早速、
25:16 五タラントン預かった者は出て行き、それで商売をして、ほかに五タラントンをもうけた。
25:17 同じように、二タラントン預かった者も、ほかに二タラントンをもうけた。
25:18 しかし、一タラントン預かった者は、出て行って穴を掘り、主人の金を隠しておいた。
25:19 さて、かなり日がたってから、僕たちの主人が帰って来て、彼らと清算を始めた。
25:20 まず、五タラントン預かった者が進み出て、ほかの五タラントンを差し出して言った。『御主人様、五タラントンお預けになりましたが、御覧ください。ほかに五タラントンもうけました。』
25:21 主人は言った。『忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。』
25:22 次に、二タラントン預かった者も進み出て言った。『御主人様、二タラントンお預けになりましたが、御覧ください。ほかに二タラントンもうけました。』
25:23 主人は言った。『忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。』
25:24 ところで、一タラントン預かった者も進み出て言った。『御主人様、あなたは蒔かない所から刈り取り、散らさない所からかき集められる厳しい方だと知っていましたので、
25:25 恐ろしくなり、出かけて行って、あなたのタラントンを地の中に隠しておきました。御覧ください。これがあなたのお金です。』
25:26 主人は答えた。『怠け者の悪い僕だ。わたしが蒔かない所から刈り取り、散らさない所からかき集めることを知っていたのか。
25:27 それなら、わたしの金を銀行に入れておくべきであった。そうしておけば、帰って来たとき、利息付きで返してもらえたのに。
25:28 さあ、そのタラントンをこの男から取り上げて、十タラントン持っている者に与えよ。
25:29 だれでも持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる。
25:30 この役に立たない僕を外の暗闇に追い出せ。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。』」