大学礼拝「あの鐘を鳴らすのはあなた」2019/12/10
鐘と聞くと皆さんは何を連想しますか。わたしは牧師なので、すぐ教会の塔の上にある鐘を思い浮かべます。チャペル(マタイ教会)の塔にも鐘があります。夕焼け小焼けで日が暮れて山のお寺の鐘の鐘が鳴ると歌われているお寺の鐘、除夜の鐘、ミレーの晩鐘なども思い出されます。昨日の朝授業の前に、第一学生ラウンジからきれいなハンドベルの音が響いてきました。クリスマス礼拝の時の練習のようでした。
鐘は時を告げる大切な役割をこれまで担ってきました。少なくなってしまいましたが、今でもまだその役割を果たしているところは残っています。けれどもいつの頃からか、鐘の音は騒音だと言われるようになりました。教会の礼拝の開始を告げる鐘の音や、お寺の朝夕定まった時を告げる鐘の音も消えつつあります。除夜の鐘も騒音扱いを受け、近隣に住宅が建て込むよりはるか以前からその地にあるお寺さんも例外ではありません。マタイ教会も塔の鐘を鳴らすのをやめてから50年以上になります。わたしが小学生の頃、鐘を撞くお手伝いをしたことを懐かしく思い出します。
ところで、皆さんは和田アキ子という歌手を知っていますか。知らないよねえ~。多分皆さんのおじいさん、おばあさんなら知っていると思いますが。2019年までにNHKの紅白歌合戦に39回出場、連続30 回出場、紅組のトリ7回、司会3回 もこなしているベテラン歌手です。
彼女のヒット曲で1972年にレコード大賞を受賞した「あの鐘を鳴らすのはあなた」(安久 悠作詞)があります。歌詞は次のとおりです。
あなたに逢えてよかった
あなたには希望の匂いがする
つまずいても 傷ついても 泣き叫んでも
さわやかな希望の匂いがする
町は今 眠りの中 あの鐘を鳴らすのはあなた
人はみな 悩みの中 あの鐘を鳴らすのはあなた
あなたに逢えてよかった
愛し合う心が戻ってくる
やさしさや いたわりや ふれあうことを
信じたい心が 戻ってくる
町は今 砂漠の中 あの鐘を鳴らすのはあなた
人はみな 孤独の中 あの鐘を鳴らすのはあなた
町は今 眠りの中 あの鐘を鳴らすのはあなた
人はみな 悩みの中 あの鐘を鳴らすのはあなた
わたしが最初にこの歌詞を読んだとき、すぐにイエスさまのことが浮かび上がってきました。聖書に記されているクリスマスの出来事、そしてイエスさまのご生涯に思いを馳せました。
あなたとは誰? それは神さまがこの世にお遣わしになったイエスさまです。イエスさまに逢えた喜びと嬉しさを伝える歌詞としてこれを読むことができます。多くの人々がイエスさまに遭ってよかったと心底思いました。つまづきから立ち上がることができ、心と体の傷が癒され、泣き叫ぶ苦しみから解放され、生きる希望が与えられました。砂漠のように渇いた心と悩みと孤独の闇の中でイエスさまに逢えたのです。
愛し合う心、やさしさ、いたわり、ふれあい、信じたい心がイエスさまに逢うことによって取り戻すことができたのです。社会の底辺で呻吟していた羊飼いたちがその代表者でした。
あの鐘とは神様からのメッセージ、良いおとずれ(福音)、イエスさまのお誕生のことです。その鐘を鳴らす(イエスさまのお誕生を告げ知らせる)お手伝いをしたのが、野原の羊飼いたちに現れた天使たちとそれに加わった天の大群でした。イエスさまのお誕生が、喜びと希望と愛の鐘を鳴らさせ、人々に眠りから覚めるべき時を告げたのです。
わたしたちが生きているこの世界は今、深い眠りと孤独との闇の中に漂っていないでしょうか。イエスさまのお誕生を記念するクリスマスは、一体わたしたちに何を呼びかけているのでしょうか。静かに考えてみたいものです。(チャプレン大西 修)