大学礼拝「エジプトの王子に起きたこと」2020/6/11
【出エジプト記 3:11-12】
3:11 モーセは神に言った。「わたしは何者でしょう。どうして、ファラオのもとに行き、しかもイスラエルの人々をエジプトから導き出さねばならないのですか。」
3:12 神は言われた。「わたしは必ずあなたと共にいる。このことこそ、わたしがあなたを遣わすしるしである。あなたが民をエジプトから導き出したとき、あなたたちはこの山で神に仕える。」
この春、この異常事態の中で、大きな不安の中で過ごされてきたことと思います。いつになったら、学校が始まるのだろう、学校が始まっても実習は大丈夫だろうか、資格はちゃんと取れるのか、ちゃんと就職できるか。様々な不安を抱えながら、今日に至っていると思います。
そして、聖書の中にも、そのような、大きな不安を抱えながら前に進んだ人物が登場します。モーセ、という人です。聖書に出てくる超有名人物で、何度も映画化されていますので、ご存知の方もいるかもしれません。
モーセは、エジプトの王子でした。しかし、彼は、実は、もともとは奴隷の子でした。事情があって親に捨てられ、王家に拾われ、エジプトの王子として成長しました。その頃、エジプトでは、奴隷たちが、ピラミッドの建設現場などで働かされていました。
モーセは、ある時、自分が、あの奴隷たちと同じ民族の出身だ、ということを知ります。彼らがひどい扱いを受けていることに耐えられなくなって、王様の宮殿から逃げてしまいます。しばらく逃亡生活を送っていたのですが、そんなモーセに、神の声が聞こえてきました。
神は言います。「私は、エジプトの奴隷たちの苦しみ、痛みを知った。彼らをエジプトから救い出す。」そしてモーセに、「民をエジプトから導き出せ」と命じます。しかし、モーセは、いやいや、それは無理だろうと、自分にそんなことできるのかと、不安を神に訴えます。
すると神は、そのように、おじけづいているモーセに対して、こう語りかけます。
「わたしは、必ず、あなたとともにいる。」
これは、聖書全体のメッセージを一言で表現するような、力に満ちた言葉、いわばパワーワードです。神はいついかなる時でも、私達と共にいてくださる。不安の中にあったモーセは、この言葉を胸に、ついにエジプトの王に立ち向かい、奴隷であった民と共に、エジプトを脱出します。
さて、4月から、私はこの柳城のチャプレンを命じられたのですが、大学のチャプレンとして働くこと自体初めてですし、また、新型コロナの影響もあり、自分に、チャプレンという大切な働きが務まるだろうか、学生の皆さんときちんと関われるのだろうかと、様々な不安があります。そして、私以上に、皆さまは大きな不安の中で、この新学期をスタートさせているはずです。
そこで、今日、ぜひ覚えていただきたいのは、そうした不安の中にいる皆さまに、神は、あのパワーワード、3000年前、不安の中にあったモーセに、伝えた言葉と、同じ言葉、「わたしは必ずあなたとともにいる」と今日も呼びかけておられる、ということです。「わたしは必ずあなたとともにいる。」私が一緒だ、だから大丈夫と、神は、言ってくださっています。
これからの新学期、ときには落ち込んだり、挫折しかけたりすることがあるかもしれません。しかしながら、神は、そうした不安や悩みを、自分の事のよう思い、「わたしは必ずあなたとともにいる」と、言っておられることを、ぜひ覚えていただきたいと思います。
皆さまのこの1年の学生生活の中に、神がいつも、ともにおられることを、お祈りいたします。(チャプレン 相原太郎)