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大学礼拝「神の業がこの人に現れるため」2022/7/6

カテゴリー:大学礼拝

【ヨハネによる福音書9:1~12】
9:1 さて、イエスは通りすがりに、生まれつき目の見えない人を見かけられた。
9:2 弟子たちがイエスに尋ねた。「ラビ、この人が生まれつき目が見えないのは、だれが罪を犯したからですか。本人ですか。それとも、両親ですか。」
9:3 イエスはお答えになった。「本人が罪を犯したからでも、両親が罪を犯したからでもない。神の業がこの人に現れるためである。
9:4 わたしたちは、わたしをお遣わしになった方の業を、まだ日のあるうちに行わねばならない。だれも働くことのできない夜が来る。
9:5 わたしは、世にいる間、世の光である。」
9:6 こう言ってから、イエスは地面に唾をし、唾で土をこねてその人の目にお塗りになった。
9:7 そして、「シロアム――『遣わされた者』という意味――の池に行って洗いなさい」と言われた。そこで、彼は行って洗い、目が見えるようになって、帰って来た。
9:8 近所の人々や、彼が物乞いをしていたのを前に見ていた人々が、「これは、座って物乞いをしていた人ではないか」と言った。
9:9 「その人だ」と言う者もいれば、「いや違う。似ているだけだ」と言う者もいた。本人は、「わたしがそうなのです」と言った。
9:10 そこで人々が、「では、お前の目はどのようにして開いたのか」と言うと、
9:11 彼は答えた。「イエスという方が、土をこねてわたしの目に塗り、『シロアムに行って洗いなさい』と言われました。そこで、行って洗ったら、見えるようになったのです。」
9:12 人々が「その人はどこにいるのか」と言うと、彼は「知りません」と言った。

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 弟子たちはイエスに、「この人が生まれつき目が見えないのは、誰が罪を犯したからですか」と尋ねます。
この時代、こうした病気や障害などの原因は、何か悪い霊に取り憑かれたから、あるいは、罪を犯した罰、と考えられていました。

イエスは、こうした考えを二つの点で否定します。一つは、誰かが罪を犯したからではない、ということです。もう一つは、そもそも、目が見えないということをマイナスに捉える必要はない、ということです。そのことをイエスは、こう表現しました。 「本人が罪を犯したからでも、両親が罪を犯したからでもない。神の業がこの人に現れるためである。」
イエスは、そう語ると、その人の目に土を塗り、そして、シロアムの池というところ行って、洗いなさい、と告げます。その通りにすると、その人は、目が見えるようになって戻ってきました。

彼が池から帰ってくると、近所の人々や、物乞いをしていた姿の彼をなんとなく知っている人たちが集まってきます。すると、口々に「彼は物乞いをしていた人なのか」「違うだろう」「似ているだけだ」などと言いいました。すると本人は、「わたしがそうなのです」と彼らに言ったのでした。
これまで、彼は、通りの傍らでひっそりと物乞いをし、見向きもされませんでした。当時の社会では、こうした人々は、物乞いをするくらいしか生きる道はありませんでした。街の人たちは、そんな彼の存在を気にも止めず、関わりを持とうとしませんでした。

ところが、イエスによって癒された彼は、堂々と道の真ん中を歩いて帰ってくるのでした。そんな彼の姿に、人々は混乱しました。彼は、一体誰なのだろうかと。彼は、人々に向けて、「わたしがそうなのです」と宣言しました。彼のこの言葉は、次のような意味を持ちました。すなわち、私は、みなさんが、これまで気にもとめず、関わりを持とうとしなかった者です。自らも社会の隅の方でひっそりと暮らさなければと思ってきました。そのようにして通りの傍らで暮らしていたその人物こそ、今、ここに皆さんの前に立っている私なのです。
この時、彼の人間の尊厳は回復され、街の人たちとの関係は、大きく変わったのでした。そのことこそ、この奇跡物語の重要なハイライトです。

イエスの時代、社会から取り残され、一人寂しく物乞いをしていた彼のように、この現代においても、多くの人たちが辛い境遇にあります。イエスがされたように、愛をもって仕えることで、無関心であった関係性が変化し、そのようにして、人々の間に神様の業が現れるよう求めて参りたいと思います。

私たち自身も、この社会の中で、自分が生きていることが無意味であると思ったり、孤独に追いやられていると感じたりすることもあると思います。しかし、そのような、私たちが生きていく中で抱えている痛み、その弱さに、イエスは語りかけられます。あなたの痛み、あなたの弱さの中に、神の業は現れます、と。だからこそ、私たちは、この世界の中で、確かに存在している、確かに生きているのだ、と宣言してまいりたいと思います。    (チャプレン 相原太郎)


中庭のラベンダー

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