【旧約聖書 創世記9章12~17節】
9:12 更に神は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。
9:13 すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。
9:14 わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、
9:15 わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。
9:16 雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心を留める。」
9:17 神はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間に立てた契約のしるしである。」
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梅雨には、雨が沢山降りますね。雨が降り、雨が上がってわたしたちが目にするのは、虹です。最近はときどき目にされるようになってきているのかなと思いますが、この虹の旗についてご存じでしょうか? レインボー・フラッグもしくは、プライド・フラッグ(pride flag)と呼ばれます。LGBTQ+を表現するための旗で、ここで言うプライドとは、ゲイ・プライドを意味します。レインボー・フラッグは最も広く使われているLGBTQ+の旗であり、LGBTQ+のシンボルとなっています。
そして今月6月は「プライド月間(Pride Month)」と呼ばれ、世界各地でLGBTQ+の権利を啓発する活動・イベントが多く実施される月です。皆さんが生まれる前、1969年6月28日にニューヨーク・マンハッタンにあったゲイバー「ストーンウォール・イン」で、始まった「ストーンウォールの反乱」という出来事があります。アメリカでは1933年には「禁酒法」が廃止され、レストランやバーで酒を出すことが合法となったのですが、この時、同性愛者への差別から、同性愛者に酒を提供することが多くの州で違法となっていました。1969年6月28日、警察が「ストーンウォール・イン」に酒類販売管理法違反の取り締まりにやってきていたのですが、この日はレズビアンやトランスジェンダーが日頃の警察への嫌がらせに絶えかねて反抗したのです。この反抗がその後の抵抗運動のきっかけとなり、LGBTQ+の権利擁護運動が始まるのですが、ストーンウォールの反乱以来、6月はLGBTQの人々にとって記念すべき月となっているのです。
さて、先ほど聞きました旧約聖書は、人間が愛し合うことが出来ずに、お互いに憎み合い、争い、生命を奪い合うような生き方ばかりをしていることに神さまが心を痛め、人を創造したことを後悔し。神さまは、地上に雨を降らせ、洪水を起こして、せっかく素晴らしいものとして造られた世界をリセットすることにしたのです。そのために、無垢な人ノアに箱舟を造らせ、ノアの家族と動物をつがいにして箱舟に乗せて、雨を降り続けさせて洪水を起こされます。雨は40日40夜降り続いて、ノアの箱舟に乗った生き物以外のすべてが、洪水によって大地からぬぐい去られます。水が地上からひいた後、神さまはノアと契約を結び、これからはどんなに人間が悪い思いを抱く存在であったとしても、二度と滅ぼすことはないと決心をされます。その平和のしるしとして神さまが雲の中に置かれたのが虹なのです。虹はヘブライ語で、ケシェトですが、弓という意味もあります。神さまは、人間を滅ぼすために、雨のしずくを射った弓を、もう二度と使わないと、雲の中に置かれたのです。空を染める美しい虹に、この神さまの決意が表されているのです。
神さまは言われます。「雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心を留める」(16節)。神さまは虹を見るたびに「地上の生き物との間に契約」を思い起こされているのです。ですから、わたしたちも虹を仰ぎ見ながら、いくら人間が邪なことを考えていても、諦めずに導いてくださる神さまの恵みに思いを馳せましょう。この世界はわたしたち人間の罪にもかかわらず、豊かに祝福されていることを虹はわたしたちに伝えています。
このように聖書で虹は、平和を指し示す約束のしるしですが、最初にレインボー・フラッグを紹介しましたように、わたしたちはこの虹を「多様性のシンボル」として、掲げて行きたいと思います。
すべての人が、様々に違った賜物を与えられています。神さまの眼差しの中で、わたしたちが、それぞれの違いを尊重しながら、互いにかけがえのない存在であることを、虹を仰ぎ見ながらしっかりと憶えて行きたいと思います。まだまだ、差別や偏見に覆われているわたしたちの世界ですが、神さまが豊かに祝福してくださっていることを、神さまの約束の虹を見ながらしっかりと憶え、互いに愛をもって仕える歩みを続けて行きたいと思います。 (チャプレン 後藤香織)